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Dual Power

あるときオフィスにサーバー管理者の絶叫が響いた。

IDCの機材すべての応答がなくなった。VPNも、踏み台も、非常用に確保していた経路も。順に潰した末に残ったのは絶望的な結論だった。全サーバーの電源断。

x86サーバーはSPARCのような豪華な冗長化を捨てている。が、電源ユニットは二重化され、片方が死んでもサーバーは動き続ける。サーバー単体の二重化はよくできている。

余談だが、興味本位でワットチェッカーをつないで計測したことがある。2本の電源ケーブルを挿した状態で、消費電力はどう分配されているのか。結果は均等分散。200W消費しているサーバーなら、各電源ユニットが100Wずつ担う。片方を引っこ抜くと残った側が200Wを引き受ける。切り替えの瞬断もない。もちろんDELLの特定機種での挙動だから、全機種がこうとは限らない。

問題はそのひとつ外側だ。IDCの契約はラックを借りるだけでは終わらない。ネット回線、電源、それぞれが別の契約として積み上がる。実際、家庭用のフレッツすら引き込める。契約は意外と柔軟だ。だが電源の中身は数字で縛られている。ラックに引き込める総容量と、タップの物理本数。容量があってもタップが足りなければ挿せず、タップがあっても容量を超えれば挿せない。

タップにはA系統とB系統がある。電源ユニット2本をそれぞれ別系統に挿す。片方が死んでも、もう片方で全サーバーが動き続ける。はずだった。

何も考えずにタップを埋めていると、縮退時に残った片系統のキャパシティを超える。サーバー単体の二重化が完璧でも、契約上の容量を超えればブレーカーが落ちる。契約ラックが一瞬で暗くなる。あの絶叫の正体だった。

自分でやらかしたことはない。だが、それ以来、サーバーを搬入する前には必ず計算する癖がついた。

クラウドの時代になって、ハードウェアに触る機会は減った。ワットチェッカーを持ってデータセンターに入る人間は、もういないだろう。たぶん。