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Still Faxing

FAXがここまで残っているのは日本くらいだという。

2020年頃の話だ。とある地方のディーラーで車の修理を出したときのこと。メールでやりとりしたいと伝えたら、FAXでアドレスを送ってくれと言われて卒倒しそうになった。メールアドレスをFAXで。

笑い話みたいだが、考えてみるとSMTPも似たようなものかもしれない。

1982年に生まれたプロトコルが、まだ現役で動いている。性善説にもとづいた設計は当然のように悪用され、SPFが生まれ、DKIMが加わり、DMARCまで来た。穴を塞いで、塞いで、延命を続けている。プロトコル自体を置き換えるのではなく、上に層を重ねて凌ぐ。FAXが残り続けるのと構造は同じだ。

sendmailのバグは終わらなかった。直しても直しても新しい脆弱性が出てきて、いつしかPostfixに道を譲った。BINDも同じだ。インターネットの根幹を支えるDNSサーバーが、定期的にCVEを量産し続けている。どちらも「置き換えたい、でも動いている」の典型で、インフラの宿命みたいなものだと思う。

LINEでDiscordの招待を受け取ったとき、既視感を覚えた。新しいプラットフォームへの招待が、古いプラットフォームに乗って届く。次の時代への切符は、いつも前の時代の乗り物で運ばれてくる。

技術は置き換わるんじゃなくて、積み重なっていく。地層みたいに。SMTPも、BINDも、埋まったまま静かにわたしたちを支えている。FAXはともかく、いつかわたしたちもこの地層の中で化石になる。