That's
Windows 95が出て、コンピュータは大衆のものになった。
それまでのパソコンといえばPC-9801だ。祖父の家にあって、たまに借りてゲームをしていた。CUIで、フロッピーを入れて起動する。DOSのコマンドを打って、config.sysでメモリを確保して、autoexec.batでパスを通す。GUIなんてものはない。マウスすら要らなかった。
95のスタートボタンは世間を騒がせた。画面の左下を押せばすべてが始まる。ファイルマネージャではなくエクスプローラ。ダイヤルアップでインターネットに繋がる。秋葉原に行列ができた。深夜販売に並んでいる人間がテレビに映った。OSの発売日に行列ができるなんて、いまでは考えられない。もっとも、当時のわたしは直接その行列を見てはいない。
少し後の話になるが、Microsoftは会員制のデベロッパープログラムをやっていた。MSDNサブスクリプションだ。試験版のOSやツールが届く。正式リリース前の新しいWindowsを触れる。友人からCD-Rを渡されて、Windows 98のベータ版をいち早く体験した。ライセンス的には怪しいが、時効だろう。新しいOSを誰より先に触っているという優越感があった。
Windows NTというOSがある。95系とは別の系統で、業務用だ。安定していたが重かった。このNTにTerminal Server Editionという特殊なバージョンがあったことは、もう誰も覚えていないかもしれない。サーバー上でWindowsのデスクトップを動かして、クライアントからリモートで操作する。いまでいうリモートデスクトップの走りだ。あの重いNTを細い回線で飛ばしていた。よく使い物になったものだ。
いまではリモートデスクトップどころか、ブラウザの中でOSが動く。あのCD-Rを大事に抱えて帰った夜が、果てしなく遠い。