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Quality Gate

品質問題で苦しんでいるプロジェクトに放り込まれた。品質PMという肩書きで入った初日、隣の席のマネージャーに挨拶したら無視された。

リリースのたびに障害が起き、ロールバックが続いていた。新機能のスケジュールは遅れ、ビジネスにも支障が出ていた。

やるべきことは教科書的には明確だ。コードレビューを整備し、リントを導入し、リリースごとにchangelogを作成する。自動テストを書き、リリース前の手動テストを組み、必要に応じてリハーサルや負荷検証を行う。正しい。だが正しいだけではチームは動かない。

大きなプロジェクトだった。マイクロサービスごとに開発チームが分かれ、体制は50名を超えていた。Tシャツとジーンズしかいない現場だったが、あえてスーツで毎日通った。とあるドラマのアドバイスに従った。第一印象は覆らない。結果として怠惰なわたしはクソ真面目という評価を得た。外部から来た人間は異物だ。特に品質という観点で開発に干渉する人間は、敵に見える。

次にやったのはランチだった。

すべてのチームリーダーと雑談をし、ランチに誘った。技術の話もしたが、それ以上に互いの顔が見えることが重要だった。敵ではないと知ってもらうこと。品質ゲートは仕組みで作れるが、仕組みを受け入れてもらうのは人間関係だ。

あの隣の席のマネージャーにも、毎朝挨拶を続けた。何度やっても返事がない。それでも続けた。

時間はかかったが、品質指標は徐々に改善した。リリースごとの品質ゲートが整備され、実用的なドキュメントも自動テストも揃っていった。リリース障害は減り、ロールバックもなくなった。

気づいたら、隣の席のマネージャーといつしか冗談を言い合う関係になっていた。ランチにもいった。これがこのプロジェクトでのわたしの最大の戦果だった。