First Router
東京めたりっく通信がADSLを始めた頃、テレホーダイ勢は熱狂の最中にあった。
常時接続。いまでは当たり前のその言葉が、当時はまぶしかった。当時のインターネットは電話回線を使っていた。接続中は電話が使えない。回線速度は64Kbps。いまのスマホの数千分の一だ。テレホーダイの時間帯だけとはいえ、それでもインターネットだった。それがADSLではるかに速くなる。革命だった。
当時のわたしは貧乏でその日暮らしだった。もしものときのために貯めていた20万が口座にあった。
ADSLに繋ぐにはルータが必要だった。モデムからEthernetに変換する、Ethernet同士のルータ。YAMAHAのRT140eという業務用ルータを、有り金すべてで買った。それがわたしのインターネットの入り口だった。
業務用なのでGUIはない。コマンドで設定する。NATの設定、フィルタリング、PPPoEの接続。マニュアルを読みながら一行ずつ打ち込んだ。
いま思えば、あのときのコマンド体系はいまもほとんど変わっていない。YAMAHAのルータは2026年の現行機種でも同じような書式で設定できる。ルータもTCP/IPも、低レイヤーの技術は驚くほど枯れている。Webのフレームワークが毎年のように生まれては消えていくのとは対照的だ。
20万のルータは高かった。でもあの箱がなければ、わたしはいまこの仕事をしていない。