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Rest in Peace

Internet Explorerが死んだ日、世界中のフロントエンドエンジニアが安堵した。

長らくデザイナーとエンジニアを悩ませてきた。CSSが思った通りにレンダリングされない。JavaScriptの挙動が他のブラウザと違う。IE専用のハックを仕込む。conditional commentで分岐する。display: flexが効かないからfloatで組み直す。本来やらなくていい仕事が、IEのためだけに積み上がっていた。

問題はIEそのものだけではなかった。大手クライアントがIE互換にこだわった。社内システムがIE前提で構築されている。ActiveXで動いている業務アプリがある。「うちのユーザーはまだIEを使っています」。その一言で、モダンブラウザ向けの最適化が却下される。IE対応を外すには、技術的な理由ではなく、政治的な理由が必要だった。

公式な死が必要だった。

エンジニアが「IEはもう古いです」と言っても通らない。ブラウザシェアのグラフを見せても通らない。Microsoftが「IEのサポートを終了します」と宣言して、初めて大手クライアントが動いた。ベンダーのお墨付きがなければ、日本の企業は動かない。互換を重んじるMicrosoftが自らIEを殺したのは、英断だったと思う。あれがなければ、いまでもIE対応の見積もりを書かされていたかもしれない。

IEが消えて、フロントエンドは夜が明けた。CSS GridもFlexboxも気兼ねなく使える。ES6の構文をそのまま書ける。Babelのポリフィルが減る。Webpackのバンドルサイズが小さくなる。IE対応に費やしていた時間が、本来やるべきことに使えるようになった。

プロダクトの死が次の時代を切り開くことがある。IEは最も偉大な反面教師だった。安らかに眠ってほしい。二度と起きないでほしい。