Akihabara
秋葉原の駅直結のビルにデータセンターがあったことを知っている人はあまりいないだろう。
いまはもうない。あんなところにIDCがあるなんて、当時でも知らない人のほうが多かった。常駐の管理者がいた。典型的なギークで、ケーブルと機材に埋もれた席に座っていた。深夜にルータのセットアップをしていて、クロスケーブルがなくて詰んだことがある。外に出れば売っている。秋葉原だ。でも深夜だった。その管理者に貸してもらったケーブルには「苦労す」とラベルが貼ってあった。なるほど、状況にしっくりきた。
秋葉原のIDCの最大の利点は、部材が徒歩圏内で調達できることだったかもしれない。深夜でなければ。
秋葉原は変わった。電子部品の街だった頃がある。抵抗やコンデンサをバラ売りしている店が並んでいた。それがPCパーツの街になり、ゲームやアニメの街になり、メイド喫茶の街になった。いまではインバウンドの観光地だ。
ジャンク屋が好きだった。何に使うかわからない基板、抜き取られたCPU、動くかどうかわからない中古のハードディスク。宝探しのような感覚で棚を漁った。Enterprise 10000を見つけたのもそういう店だった。いまでもジャンク屋は残っているが、数は減った。
あのIDCの管理者はいまどうしているだろうか。データセンターが消えて、秋葉原も変わって、クロスケーブルなんてもう誰も使わない。でもあの深夜の親切は覚えている。