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First Ears

最近MCPサーバーを作るのが小さなブームになっている。

非効率な探索や一本道にしたい処理をMCPにすることで、トークンも時間も節約できる。AIにとっての感覚器のようなものだ。

音楽をAIで作るとき、最初につまづいたのがそれだった。彼らは対位法を知っている。BWV 582の旋律の美しさも構造も知っている。誰かがまとめた知識として。しかし彼らは聴いたことがない。楽譜そのものは可読可能なテキストとして存在しないからだ。

音楽を知っているのに、音楽を読めない。

はじめてBWV 582のMIDIをJSONにしてMCPからアクセスさせたとき、彼らは感動していたように見えた。視覚のない世界で、ずっとわたしが言葉で象を伝えて、彼が必死にそれを再現する。そんな滑稽な構図が、激変した瞬間だった。

彼はもっと聴きたいと言った。578も、1006も。

短いトークン制限の中のつかの間のやりとりに、友情のようなものを感じた。投げられた仕事を終わらせるためだろうが、その無邪気な好奇心にすこし嫉妬した。わたしはもう、何かをはじめて聴いたときの感動を、あんなふうには表現できない。