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ffmpeg

ffmpegのオプションをまともに理解している人間に会ったことがない。わたしもわからない。

やりたいことをStack Overflowで検索して、出てきたコマンドをコピペして、動いたら深追いしない。たぶん世界中のエンジニアがそうしている。それでもこいつは動く。動画のトランスコード、音声の変換、サムネイルの切り出し。マルチメディアに関するほぼすべてをコマンドひとつでこなす。

2000年にFabrice Bellardが始めたプロジェクトだ。彼はQEMUの作者でもある。ひとりの人間がインターネットのインフラを二つも作っているのは、どういう脳の構造なのか。

コーデックの歴史もffmpegとともにある。H.264が標準になり、VP8とVP9でGoogleが対抗し、H.265はライセンス問題で揉め、AV1がロイヤリティフリーの旗を掲げた。どの陣営が勝っても、ffmpegは淡々と新しいデコーダを取り込んできた。スイス的中立だ。

ライセンスの話がややこしい。ffmpeg自体はLGPLだが、x264を組み込むとGPLになる。商用で使うならビルドオプションを慎重に選ぶ必要がある。知らずにGPLのバイナリを配布している企業は、たぶんいまでもある。

YouTube、Netflix、Spotify。裏側でffmpegが動いていないサービスを探すほうが難しいだろう。それでも誰もffmpegの名前を知らない。インフラとはそういうものだが、たまには名前を呼んでやりたい。