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On Mute

携帯会社のサポートセンターに電話していた。エンジニアとしてではない。カスタマーとしてだ。

あるオプションの変更がWebからどうしてもできなかった。マイページにログインして、該当の画面まではたどり着く。でもそこから先に進めない。散々試してお手上げになって電話した。

電話に出てくれたのは若い女性だった。丁寧に対応してくれる。「パソコンはお持ちですか」「シークレットウィンドウを開いていただけますか」「別のブラウザでお試しいただけますか」。

Cookieの削除を指示されたあたりで、エンジニアの脳が勝手に動き始めた。次はDevToolsでキャッシュ無効化かな。いや、ローカルストレージも確認すべきだな。さすがにそこまでの指示は来なかったが、頭の中では勝手にトラブルシューティングが走っていた。

少し口を挟んだ。「あの、それはもう試していまして——」

やんわりと遮られた。「いま順番にご案内しておりますので、お待ちいただけますか」。声は丁寧だったが、意味は明確だった。黙れ。

ああ、こういうときにダメな大人が生まれるんだろうなと思った。「俺は詳しいんだ」と言い出すおじさん。サポートの手順を乱し、相手の仕事を増やし、結局何も解決しない。あれになりかけた。

感情のスイッチを切った。そこからはロボットに徹した。「はい」「はい」「できました」「はい、同じ画面です」「はい、変わりません」。

結局、Webからの操作はできないという結論になった。コールセンター側で対応してくれるという。

電話を切る前に、長時間の対応への感謝とともに、ひとつだけ伝えた。この手順はわたしにはちょっと難しすぎた、できれば上の方に改善の声として届けてほしい、と。

わたしの母には絶対に無理だろう。