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Not Life or Death

2011年3月11日、代々木のオフィスにいた。

いつも通りキーボードを叩いていた。打ち終わって視線を上げた瞬間、揺れが来た。やばいやつだと思った。縦に揺れている。

前日、19インチのフルラックをオフィスに搬入したばかりだった。設置が間に合わず横倒しで仮置きしていた。結果的にはそれが正解だった。立てていたら倒れていた。最悪の事態への備えが、偶然できていた。

激しい揺れだったが、けが人はいなかった。近くの公園に仲間たちと避難した。遠くでビルが揺れていた。公園には近隣のオフィスワーカーや住民が集まり、不安そうな時間が流れていた。余震が来るたびに誰かの声が上がる。スマホは繋がらない。皆が家族と連絡がとれなくて不安になっていた。

そのとき、代表だった友人が言った。

われわれの仕事は、いますぐ誰かの命にかかわらない。だから今はすべて放り投げて、自分のすべきことをしましょう。

正確な言い回しは覚えていない。でも意味は覚えている。あの混乱の中で、いちばん冷静な判断だった。

いまでもギリギリの状態になったプロジェクトで、あの言葉を思い出す。追い詰められ憔悴しきったメンバーに、あのときの言葉を借りて伝えることがある。ひとの命を預かっている仕事じゃない。放り投げていい。自分の命を大事にしてくれ、と。