I Lied
日本のエンジニアは間違いを認めない。
正確に言うと、「間違いました」と言えない。代わりに何と言うか。「嘘つきました」と言う。
会議で仕様の解釈を誤って説明する。指摘される。「あ、すみません、嘘つきました」。障害対応中にログの読み間違いを報告する。「嘘つきました、こっちが正しいです」。コードレビューで誤ったコメントを付ける。「嘘ついてました」。
間違えただけだ。嘘なんかついていない。事実誤認と虚偽は違う。だが日本のエンジニアの口からは、なぜか「嘘つきました」が出てくる。わたしもそうだ。周りも全員そうだ。なんらかの見えないウイルスに罹患しているとしか思えない。
「間違いました」と言えばいいだけのはずだ。六文字だ。UTF-8で18バイト。難しい発音もない。なのにその18バイトが出てこない。代わりに「嘘つきました」という同じ18バイトが、するりと口から出る。
たぶん、無知を認めたくないのだ。「間違いました」は「わたしは正しい答えを知りませんでした」を含む。「嘘つきました」は「わたしは正しい答えを知っていたが、別のことを言いました」を含む。後者のほうが、なぜか心理的に楽なのだ。知らなかったのではなく、知っていたのに言い損ねた。そういうことにしたい。
エンジニアという生き物は、技術的に無知であることを死ぬほど恐れているのかもしれない。間違えることより、知らなかったことのほうが怖い。だから無意識に、無知を虚偽に変換する。知らなかったのではない、嘘をついたのだ、と。
冷静に考えると、嘘つきのほうがよほど問題だと思うのだが。
嘘ついた。思っていない。