Author Arrested
ReiserFSを知っているだろうか。
Linuxのファイルシステムのひとつだ。B+木ベースの設計で、小さなファイルの扱いが効率的だった。ext3の対抗馬として有力視されていた時期がある。カーネルのメインラインにも取り込まれた。スタンダードを取れる位置にいた。
2006年、作者のハンス・ライザーが妻の殺害容疑で逮捕された。2008年に有罪判決。ReiserFSの開発は事実上止まった。技術的に優れていたファイルシステムが、作者の蛮行によってスタンダードを取り損ねた。ext4が標準になり、ReiserFSは忘れられていった。
OSSの世界では、プロダクトと作者の距離が近い。企業が開発するソフトウェアなら、担当者が変わっても組織が引き継ぐ。個人が主導するOSSにはその保証がない。作者が消えたら、プロダクトも消える。
npmの世界でも似たようなことが起きている。colors.jsとfaker.jsの作者が、無償のOSS労働への抗議として自らのパッケージを破壊した。バージョン6.6.6に無限ループを仕込み、依存していた数千のアプリケーションが壊れた。逮捕ではないが、作者の意思ひとつでサプライチェーンが崩壊した。
わたしたちは見知らぬ誰かが書いたコードの上にシステムを構築している。その誰かが明日も正気でいる保証はどこにもない。