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Borrowed Compute

このところ、脆弱性の話をXで先に拾うことが増えた。

CVE番号、再現コードの断片、各方面の反応。Grokがその文脈で要点をまとめてくれる。誰がどう反応していて、PoCがどこにあって、当該ベンダーがなんと言っているか。Xのサーチを背負っているぶん、一発で見せてくれる。

芸能事業をやっていると、Xの動向は仕事に直結する。タレントの検索数、ファンクラスタの熱気、炎上の兆し。Web検索ベースのAIではこの粒度には届かない。スタッフには既にGeminiを配っているが、リアルタイムの温度感までは届きにくい。

Grokも配りたい、と思った。Heavyは要らない、無印のSuperGrokで十分だ。だが、GPTも画像生成で使うので配ろうか検討している矢先。そこにGrokまで重ねると、月$30とはいえ人数分の請求はじわじわ効いてくる。諦めた。

幸い、xAIには従量制のAPIがある。これを内製ツールから叩く形にすれば、月額契約を人数分積まずに済む。そう考えて、grok-mcpを書いた。Claude CodeやCodex CLIから、Grokを叩けるようにするMCPサーバだ。情報の鮮度が欲しい問いはGrokに振り、コードの話はClaudeに戻す。AIごとに得意領域が分かれてきた以上、ルーターが要る。

それを書いている最中に、AnthropicがxAI/SpaceXと計算リソースを契約した。xAIがメンフィスに構える巨大GPUクラスタ、Colossus 1。そのリソースをClaudeが使い、対価としてClaude Codeのrate limitが倍になった、と発表された。MuskとAnthropicは、しばらく前まで互いに公開で文句を言い合っていた間柄だった気がする。AI開発戦争の勢力図は、毎日塗り変わる。

そして同じ月に、xAIはGrok Build CLIを出した。Claude Codeの対抗で、CLIで動くコーディングエージェントだ。ただし当面はSuperGrok Heavy向けで、月$300のプランのみが利用できる。

ここで自分のやっていることを並べてみると、笑えてくる。わたしは、xAIのインフラを借りて動くClaudeを使って、Grokを叩くMCPを書いている。Grokを社内に配るために、Grokの競合のターミナルを叩いて、Grokに繋ぐコードを生成させている。

巨人たちが巨額の計算リソースを取引している頭上で、わたしはAIをAIに繋ぐ小さなルーターを書いている。AI戦争の本流には乗れないが、ルーター一本分の仕事だけは、まだこちらの手もとに残されている。