Layer 8
エンジニアの育成にかかわってきた。
いろいろやってきた結論は、好奇心が強い人間は伸びるということだろうか。物事をありのまま受け入れるタイプと、機序を確認しないと気が済まないタイプでは、後者のほうが明らかにエンジニアには向いている。
ただ、昨今のエンジニアリングは抽象化が進みすぎて、好奇心の向かう先が遠くなりすぎている。L7なんてものではない。フレームワーク、トランスコンパイル、コンテナオーケストレーション。定義にはないが、L8と言ってもいいのではないだろうか。
抽象レイヤーが増えると、具象の世界との隔たりが大きくなる。ICMPのパケットヘッダを覚えるモチベーションは、いまの若手にはないだろう。動くものが作れてしまうのだから、その下を覗く理由がない。好奇心の火種はあっても、燃やす場所が遠すぎる。
これまでは好奇心だけで何とかなった。下のレイヤーを知りたいという欲求が、自然と全体感を育ててくれた。
でもAIにコードを書かせるようになって、全体感のなさが目に見えるようになってきた。何をどう頼むかで出力が変わる。抽象レイヤーの下で何が起きているか知らないと、的外れな指示を出し続けることになる。
好奇心で降りていた階段を、これからは必要に迫られて降りることになる。しかしL8の世界で即座にアプリが動く報酬を知ってしまった脳は、成果の見えない長い階段を降りることを拒絶する。